ホリータイム

夕方6時になると町の中に「ムーン・リーバー」が流れ出す。
これって昔はただの鐘の音だった
いつの間にかのムーン・リバー。
歌のない曲。
耳を傾けたらじっとその場で動かない。
一日のうちで神聖な気持ちになれる瞬間って
どれくらいあるだろう?
そんな全然ない日でも、夕方6時、
この曲が町中に流れはじまった瞬間に
クリスマス・イブのような
大晦日の深夜のような
神聖で清らかな気持ち。
夏の日の生温かい風も
冬の日の冷たい空気も
それぞれの夕方6時の数分間だけ
毎回同じ神聖さを胸に刻む。
うるさいラジオの音、
くだらない言い争いが聴こえてきても。
どんな顔をわたしはしてるのか。
きっとこの町の人は、
気づいてなかったとしても
心のどこかで感じているはず。
わたしが感じている間
誰かもこうして耳を傾け
何かを感じているに違いない。
わたしにとって最低でも2つ。
静寂な宇宙をみあげる、毎朝夜明け前の時間帯。
夕方6時のムーンリーバー。
どんなに腹がたった日も
情けない自分を嘆いていても
あるべき姿を思い出させてくれる。
毎日の奇跡の時間